振動ロガー活用事例紹介
フィジカルインターネットの実現に向けた物流研究について
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インタビュイー
明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授 橋本雅隆 様
https://www.meiji.ac.jp/mbs/faculty/HASHIMOTO_Masataka.html
橋本先生は、物流におけるビジネス・商取引を中心とした研究に取り組まれるなかで、各省庁が主催する物流関連の様々な会議の委員を歴任されている、物流研究の第一人者です。今回は、橋本先生が提案する新しい物流プラットフォームの実証実験に弊社の振動ロガーを採用頂いたことをきっかけとして、現在の物流業界の課題から現在取り組み中の研究内容について伺いました。
研究内容の紹介
-まずは橋本先生の専門領域について、教えてください。
(橋本先生)「主な専門領域はサプライチェーンマネジメント、ロジスティクスです。 物流研究には、商業学、経営学、流通論、交通論、都市計画学、土木工学、交通工学、オペレーション・マネジメントなど様々な側面からのアプローチがあり、学際的な研究が行われています。
このなかで、我々は特に商取引やオペレーション・マネジメントなど、ビジネスの視点から研究を進めています。現在は、環境問題や災害災害対策、人手不足、地域過疎化にともなう物流課題の解決とサプライチェーンの強靭化に関する研究を目的とし、明治大学内に設置された『BCP・SCM研究所』を運営しながら、経済産業省や国土交通省が主催する物流関連の各種委員会にも参画しています。」

日本の物流における課題とその対策
-現状の物流における課題とその対策に向けて、国としてはどのような取り組みが行われていますか?
(橋本先生)「2024年4月より施行された法改正※1により、トラックドライバーの所定外労働時間の上限規制が設けられたことにより表面化したトラックドライバーの不足(いわゆる2024年問題)と、物流業界における商取引慣行の問題※2が挙げられます。
これら物流の課題を解決するため、国は総合物流施策大綱のなかで様々な対策を議論しています。このなかの取り組みの一つとして、2022年にフィジカルインターネット※3の実現に向け、2040年までのロードマップが作成されました。また、トラックドライバー不足による課題に対する対策として、2025年4月に『流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律』が施行されます。これは、物流の効率化を目的とし、特定事業者に該当する一定規模以上の荷主・物流事業者は、2026年4月から物流の効率化に関する中長期計画の策定と報告および、企業内での物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられるようになります。」
- ※1 労働基準法の改正と、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)の改正
- ※2 競争激化により適正賃金の要求が困難な環境、多重下請け構造により現場物流事業者に十分な利益確保が困難になっていること 等
- ※3 インターネットのパケット通信の考え方を物流(フィジカル)に適用し、モジュール化さた標準的な荷姿の貨物をベースにバケツリレー式の混載輸送を行う新しい物流の仕組み

物流課題解決に向けた研究
-物流課題解決に向けた具体的な研究内容を教えてください。
(橋本先生)「我々の研究では、デジタル化を前提として、ロジスティクスと金融サービスを融合したシステム(以降、当システム)を提案しています。具体的には、集荷と配送を同時に最適化する輸送計画の策定、発荷主における貨物とパレットおよび荷台の情報の紐付けおよび事前出荷明細の送信、バース予約、輸送過程のトレース(GPSと振動・温度等)、納品・検品から代金回収までの一連の物流業務の流れをデジタル・データ化しながら各作業を自動化するプラットフォームを、既存技術・サービスを組み合わせることで形成しました。
当システムの特徴の一つは、集荷から代金回収まで物流の一連の流れを自動化できることにあります。これにより、代金回収業務効率化や資金繰り改善など、サプライヤーや物流事業者の運転資金の負担軽減が期待されます。サプライヤーや物流の現場にデジタル化を促進させていくためには、物流事業者が享受できるメリットを明確に示すことで、実用化への後押しをすることが必要となります。当システムでは物流と金融サービスを融合することで、そのメリットを強調しました。
もう1つの特徴は、オープンプラットフォームを設計思想としたシステム構築です。既存の物流管理システムでは、取り扱うデータを自由に活用することが難しい問題があります。たとえばバース予約システム、運行管理システムなどは、すでに各社がサービスを展開していますが、各データはそのサプライヤーのアプリの中でしか運用ができず、別々のシステムを利用している場合には、データの連携が円滑にできないのが現状です。さらなる物流業務効率化のためには、すべての物流データを横断的に活用できる環境構築が必須であることから、当システムでは当初からオープンプラットフォームを意識して形成しました。
なお、当システムは、実際の物流環境のなかで、その実現可能性を検証するため、サプライヤーと物流事業者の協力のもと2025年2月に実証実験を行いました。」

物流における振動計測の重要性
-当システムのなかで、振動データの役割とは何でしょうか?
(橋本先生)「振動データは、納品された貨物が安全に運ばれたことを証明するために利用します。実際の輸送振動の数値から、受け入れ条件の合否を自動判定することで、納品時の検品も人手によることなく自動完了でき、業務効率化になるだけでなく、物流事業者の輸送品質証明にもつながります。日本の物流サービスは、諸外国と比べると丁寧で品質が高いともいわれていますが、それを数値で示していくことが、今後の物流事業者の強みにもなっていくと考えられます。」
-当システムのなかで、振動データの役割とは何でしょうか?
(橋本先生)「振動ロガー採用基準は、データの無線通信が可能であることや振動測定範囲が広いことに加え、神栄テクノロジーには積極的に協力していただける体制があったことが採用の決め手となりました。」

今後の取り組みについて
-今後の物流課題の解決に向けた取り組みや、各企業が対応していくべき課題があれば教えてください。
(橋本先生)「物流全体での業務効率化は喫緊の課題です。冒頭に説明したように、国の施策として物流業務における規制が強化されていく動きがあります。これは各企業に対して、物流が経営の根幹であることを改めて認識し、自社の物流環境を見直すことを求めています。
このような中で、物流現場情報のデジタル化は、その重要性が益々増えていくことでしょう。この流れを加速し、フィジカルインターネットを実現していくためには、発着荷主と物流事業者がお互いに協力しながら物流データを蓄積していく仕組みを構築することが重要です。この中で収集された物流現場のデジタルデータを活用すれば、今後の需要予測や工程の改善、計画的なオペレーションなど、様々な課題が解決され、物流の革新につながっていくはずです。
今回の実証実験はその第一歩として、今後、物流業界や金融業界から様々な要望や新しい流れが出てくることを期待しつつ、そのなかで私たちの研究成果が役立てるよう、今後も取り組みを進めていきたいと考えています。」
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